戦略
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戦略鍋:その他〜中小企業診断士の偏見的戦略論

論理的であるということ。

年末や期末が近づくと、社内ではいろんな声が聞こえてくる。そのひとつは経営職層や管理職層からのお小言(グチ)だ。今年の業績はどうだ、来年はどうなんだ、お前らオレが前から言ってるようなことをやらないからこうなるんだ、あんだぁこうだぁなんなんだぁ、ともれてくる。
要するに業績が悪いという事実を受け止めきれなくて、責任回避に必死になってるわけですね。騒いだところでアンタの責任がなくなるわけぢゃないのに、悲しいことです。気持ちはわかりますが・・・。

で、グチはまぁいい。経営職層ってのは孤独だよな。いいよいいよ、オレが聞いてやる。酒か?飲まなきゃやってらんねーか。そーかそーか・・・って感じで聞いてやってもいい。いいのだが、その言い分が気に食わない。何がって、あくまで「自分は悪くない」というスタンスなのだ。出世を考えて間違いを認めたくないのか、それとも本当に間違ったと思ってないのか。ホントのところは不明だが、オレは思う。彼らは自分が間違ってることに気が付いてない。特に、自分の出した戦略/戦術的な指示・命令・対策が間違っていることに気が付いてない、のである。

業績悪化に苦しむ昨今、今までのやり方を変えていかなきゃいけない、なんてコトはどの会社でも掲げられていることだろう。これまで従来型のやり方を踏襲することしか知らなかった人たちが、何も知らない者同士で会議を開き、現実のシステム構造も理解しないまま対策を導き出す。
とりあえず関係メンバーは集めた。とりあえずそれなりの時間をかけて会議をした。とりあえず対策案がでた。会議では特別反対者もいなく合議できた。そして、彼らは対策を公式なものとして発表する。こうして公式なプロセスを経て生まれた対策案は正しいものとして取り扱われる。

で、それは下々へと伝達されてゆくわけだが、その案はあまりに意味がない/見当はずれと感じる場合がしょっちゅうである。どー考えても違和感のある内容に思えるのだが、彼らはすっかりそれが正しいと思い込んでいる。彼らは自分達が考えひねり出した対策は正しいと、なぜかしらんが思い込んでいるのである。

さて、ここには集団的意思決定の持つ問題などいくつか論点が含まれると思うが、まず率直に感じるのは「なぜ彼らはその案に違和感を覚えないのか?」ということである。言い換えれば、「なぜ自分の案が正しいと、かくも簡単に思い込んでしまうのか?」ということが、私にとって不思議なのである。

というわけで、会社で直接言えばいいのだが平穏無事にいきそうもないので、超遠まわし的にあえて全世界的に聞こえるようにこのHPに「論理的であること と それが正しいことであること とは違うのだ」ということを書き留めておくコトにする的みたいな、のである。

事例1 絶対正しい野球監督のワナ

どこぞの会社でありそうなこんな上司のコトバ。

「先月も先々月もその前も、これまでの売上の悪さが累積し、今月末で売上○千万足りない。しかも今期はあと×ケ月しかない。よし、いいか。今後の指示だが、まず、今商談中の案件は全てモノにするんだ。そしてこのチームは▲人だから、あと×ケ月で一人当たり△百万稼ぐんだ。そうすれば今年の目標は達成できる!

こういう内容を聞いて頭にふっとよぎるのは、「絶対に正しい指示を出す野球の監督」である。次に書く監督の指示読んで違和感覚えない人は、ちとリフレッシュしてきた方がいい。

「いいか、これから勝つための指示を出す。まずピッチャー。お前は今日、全員三振にするんだ。そして四番。お前は1本だけでいいから必ずホームランを打つんだ。そうすればこの試合、絶対に勝てるっ!」

この監督、論理的には正しい。一切間違ってない。同じように、先の上司の命令も正しい。間違ってない。でも、どちらも、99%達成できない。先月も今月も売上悪かったのに、来月売上が急に良くなりなんかしない。ピッチャーは完全試合なんかできるわけがない。でも、100%達成できないとは言い切れないのがミソとなる。
なぜなら、1%でもできる可能性があるならば、達成できなかった場合「おまえらの努力が足りなかったからだ」といえるからである。

政治家のようにわざとそう言ってるならいいが、実際には本心から出来そうもない指示をしている上司が多い。そう、上司が気が付かないのは、自分の指示の滑稽さである。どれだけ滑稽な指示をしているかに気付いてないのが最大の問題なのである。

事例2 だから、それで困ってるんだとつっこみたいバカ医者

今度は部下と部長の会話。

「部の業績があがらりません。得に利益がでなくって・・・どうしたらいいっすか、部長!」
「うーん。そうだなぁ・・・。利益が出てないとなると、まず案件を見極めて、利益の出そうなモノに力を集中すればいいではないかな」

こういうのは、次のたとえ話をだせば、違和感が分かるだろうか。

「先生、頭痛がひどくって仕事も手につかないんです。どうしたらいいでしょうか?」
「あー、それは頭痛を治せばね、大丈夫だよ」

だからぁ、頭痛が直んないから医者にきてるのに、頭痛を治せってどういうことだよ。喉みたり熱測ったりして頭痛の原因とそれを直す薬を出すのがお前の仕事だろって思いません?同じく、利益がでそうなモノに集中しろっていわれても、利益が出てないモノばっかりだから困ってんぢゃないかってことなわけです。いやね、そりゃどちらも言ってることは間違ってない。確かに頭痛を直せば楽になるし、利益の出る物件に注力すれば利益は増える。論理的ではある。でも正しくもないのである。

「論理的であること と それが正しいことであること とは違うのだ」

考えてみれば、だいたいが「間違う」というのは「そのときは正しいと思ってる」場合や少なくとも「正しくやろうと心がけている」場合に発生するから「間違う」になるわけで、両者は常に共存する概念なわけだ。だから、正しいと間違えは紙一重であり、しかも人により正しくも見え間違いに見えたりするのでさらにやっかいなのは事実である。

そして「正しくやろうと心がける」ことの背景には「論理性」が潜んでいる。なぜなら「正しくやろうと心がける」とは「ルールとおりにやろう・順序とおりにやろう・論理的にやろう」というようなことを指すからである。よって、「正しくやろうと心がけて出てきた結果」は、当の本人にとっては「論理的に考えて出てきた結果」と同じものとなるのである。

こうして、論理的なモノと正しいモノとは同じベクトルをもつことになる。だからこそ余計に「論理的であること と それが正しいことであること」との違いが見えにくくなるのである。つまり、「論理的であるが正しくないこと」を自分で判断することは非常に難しいのである。でも、それに気付くのも、診断士のひとつの役割ではないかと、このごろ思う。

と書いてるが、この文章も欠陥があるのかもしれない・・・と不安になってきた。ま、別にいいんだけど。
(2002年12月25日 水曜日)

W杯記念 サッカーにみるランチェスター戦略

ランチェスター戦略・・・名前は結構有名なのであるが、中小企業診断士にとっては主流とは言えない戦略である。受験勉強中にランチェスター戦略を学ぶこともなかったし、おそらくは現実の診断でもあまり活用することはないであろう(一部、営業業務には使うかもしれない)。

サッカーを観ると、このランチェスター戦略を思い出すことがある。もともと戦争に勝つため考案されたランチェスター戦略ゆえ、サッカーに通じるものがあってもおかしくはない。

さて、ランチェスター戦略。診断士にとって主流でないため、私自身はたいしてこの戦略を理解していない。と言い訳した上で、ちょっと戦略鍋ってみよう。

この戦略は第一法則と第二法則から分けられる。
 第一法則:Mo-M=E(No-N)
 Mo:戦闘前のM軍の兵力数、M:戦闘後のM軍の兵力数、Mo-M:M軍の戦死者数
 No:戦闘前のN軍の兵力数、N:戦闘後のN軍の兵力数、No-N:N軍の戦死者数
 E:武器効率(武器の性能)

 この式が意味することは、武器の性能が同じならばM軍とN軍の死亡確率は均衡するため、兵力数の多い方が勝ちを収める、ということである。うむ、きわめて単純。この法則は、1対1という戦闘現場で成り立つ法則といわれている。

 第二法則:Mo2-M2=E(No2-N2)・・・Mo2の2とは2乗のこと。Moなどの記号は上と同じ

 こちらはいわゆる近代兵器を使った場合の法則。戦車や大砲などを使った戦闘行為の場合は、一発で多くの兵力を奪う。ここでは相手兵士の数の2乗分の攻撃を受ける、と言われているのである。よって、お互いの武器の性能が同じなら、戦闘開始時の兵士数の2乗で戦うことになる、というわけである。近代戦では一方が圧倒的な勝利となるのもこれなら頷ける。

 実際には戦術力・戦略力などを加味したややこしい式が別にあるのだが、基本はこういうことらしい。ビジネス的には、中小企業は地域を限定して営業活動するなどなるべく局地戦になるように仕掛け、逆に大手は小出しに攻めるようなことはせず、バーンとハデに広告をうって一気に攻めた方がイイんだよーということになるのである。

 んで、サッカー。ディフェンスラインを押し上げて中盤を狭くし、ボールを持つ相手に対して常に数的優位を保つようにしているうんぬんという解説を耳にするのだが、これってランチェスターの第一法則にぴったり。ボールを持つ敵1人に対して2人で襲えば敵をつぶすことができるってわけだ。そう考えると、仮に10人対11人でサッカーをやっても、ボールを持つ個人レベルの争い(局地戦)で数的優位を保つようにすれば、特段不利になるわけではないともいえる。
 第二法則はおそらくサッカー選手を養成するシステムにおいて当てはまると考えられる。適切で科学的なトレーニングプログラムを持つ国同士であるならば、サッカー人口の多い国の方が圧倒的優位にたてる、というわけである。・・・となると、将来は中国が台頭してくるのであろうか?
(2002年6月18日 火曜日)

自分分析



中小企業診断士の資格を取って、まだ間もないおいらは、この世界にどんなスゴイ人々がいるか全然知らない。しかし、それでも勉強会等を通じて、ソコソコの人々と会ってきた。

 中小企業診断士と言っても、それほど特殊なことはない。一般サラリーマン社会同様に、どちらかといえば、まじめな人々の集まりである。悪く言ってしまえば、一般日本人社会同様に「個性なき集団」といえなくもない。
 ただ、一般日本人より比較優位なのは、基本的に「論理思考能力」を持っていることである。論理思考能力を持たない診断士ってのは、ほとんどいない。診断士と議論すると、幅や深みが出るのは事実である。

 しかし、このチカラを文章で表現したり、口頭で伝えたり、自分で行動して形にしたり、と能動的な作業に変換しようとすると、人により大きな差が出ている(と思う)。「彼は確かに論理的で頭イイけどさ、どーもなぁ・・・」という診断士は、一般日本人サラリーマン社会同様に、いっぱいいる、のである。

 さて、「おまえはどうなんぢゃ!」というわけで、

  『おいらの知ってる範囲の中小企業診断士集団における自分ポジショニング分析』

 を暇つぶしにやってみた。
 項目は、なんとなく思いついた以下の8点で試みた。
 縦軸は希少性をとってみた。下半分は希少性が低い=診断士ならみんな持ってる、上半分はその逆に持ってない人も多い、ということである。
 横軸は僕自身の保有能力。右半分は、人よりあるかなぁという項目。左半分はその逆で人に劣っている能力、である。

項目 項目の説明 オレ分析
発想力 オリジナリティのあるアイデアを生み出すチカラ 友人によると、ボクには発想力があるらしい。論理思考に頼る診断士軍団にはツイラ能力なのか?
人心理解 人の思いや考えを感じ取るチカラ 臆病なので、結構敏感。感じやすいです。
講演力 診断士ってのは講演することもある。人前でバシッと講演するチカラ 基本的に上がり性なので、多分ダメ。いつも参加している勉強会などのように、身内だけなら、それなりにできるか?
行動力 これがないと、ただの評論家 走るまでがなぁ・・・。優柔不断なもので、走ると決めるまでにえらい時間がかかるので、フットワークは軽くない。
文章表現力 診断士は執筆だってするのである 多くの診断士は、論文系文章は普通に書いちゃうでしょ。自分では文章力があるとは思ってないのだが、友人によると、文章力はあるらしい。
計画力 これができなきゃ、行動もできん。プランを実践する要だ。 診断士の得意分野ですね。んー、まぁソコソコ。
数的センス 経営分析する上で、必要不可欠。 ありません。断言しますが、ありません。
論理構成力 診断士の基礎的能力。これなくして診断士試験に受かることはない 標準並。診断士試験に受かる程度にはある。


★マトリックス分析は論理思考のカギ
 ちなみに、というかこっちが趣旨なんだが、上記のようなマトリックス分析はコンサルタントにとって必要不可欠なものである。診断士の勉強をしていれば、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)など軸が固定されているマトリックスを見かけることが多いが、アレは「代表的かつ歴史的に価値のあるマトリックス」というだけであり、基本的には目的に合わせて軸は自由に設定して使ってよい。ただし、自由に軸を設定する場合は、『軸をどうとるか』がマトリックス分析の最大のカギとなるので、軸決定は慎重に行うべきである。
 コンサルタントは、突き詰めれば、この「マトリックス分析」と「ツリー分析」でほとんどの思考作業を行っている。人により多少やり方、形は変わっても、原型はマトリックス分析とツリー分析なのだ。
(2001年11月21日 水曜日)
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